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海の町・浪江を勇気づける「海鮮和食処くろさか」の海鮮丼

海の町・浪江を勇気づける「海鮮和食処くろさか」の海鮮丼

海との日々で育った職人が作る、こだわりが詰まった海鮮丼

「小さい時は、遊びに行くとなれば浪江の海。家から近かったのでしょっちゅう泳いだりしてました」
まち・なみ・まるしぇに暖簾を掲げる店舗の中で、海鮮丼を中心に据えた和食を提供するのが海鮮和食処くろさか。

ある日のお昼時。店内は畳の座敷席もテーブル席も満員御礼。海の町・浪江という場所柄も手伝ってか、新鮮な海の幸と白いごはんを、おもむろに頬張るお客さんで賑わっています。
豊富な丼のメニューの中でも、イチオシというのが海鮮丼。可能な限り福島の相馬港で水揚げされた魚を使うのがこだわり。

大きな丼の中に泳ぐ、色鮮やかなネタの数々。やはり目を惹くのはマグロですが、その周りにあるアジや白身魚といった地魚の鮮度の良さはもちろん、 町中のマンホールにデザインされているほどに、浪江を象徴する魚・鮭を連想させる、サーモンとイクラの存在感も光ります。

お味噌汁に自家製の漬物、そして副菜と共にいただければ、ふと感じたのは『これは形を変えた漁師ごはんだ』ということ。よそ行き感のある外食ではなく、家庭で食べているような雰囲気を感じます。

また、普段使いにありがたい定食も見逃せません。唐揚げや生姜焼きにロースカツなど、毎日通っても飽きがこない豊富なラインナップが、町の胃袋を支えています。

故郷の変化と揺るぎない故郷への思い

このお店を営むのは黒坂千潮さん。かつて、町の人々に愛された布団屋さんの次男坊です。

「昔、浪江に住んでいたときには何もなかった。でも大人になって帰省すると飲食店が増えていたりして、その進化に驚きましたね」

小さい頃にテレビで見た『料理の鉄人』。ブラウン管の向こう側で腕を振るう料理人のカッコよさに震えた記憶は冷めず、 高校を卒業してすぐに上京。「専門学校に通うよりも、自分で実際にお店で働いて腕を身に着けたほうがいいのでは」と、修行先の門を叩いた日から20年以上が経過します。

「中華とか色々なジャンルの料理に携わった中で、和食が一番ビッと来たんです。都内のお店で、最初に配属されたのが寿司部門だったこともあったのですが、その時はお寿司をやりたいと思わなかったものの、寿司を作ることに楽しさが芽生えて、これを中心に和食を習っていきました」

競争激しい都内の飲食店で研鑽を重ね、東京で独立したのは30歳の頃。技術的にも脂が乗った時期、これからという時でした。しかし、その数年後に東日本大震災が発生。避難指示区域に指定された故郷・浪江町からは、人の姿は消えてしまいました。

「もちろん、浪江で生まれ育ったので、自分も復興に向けて何かできるのでは?と思ったのですが、戻ってくる機会がなかったんです」

丁度同じ頃、体調を崩してしまい休養をしながら日々を過ごしていた千潮さん。その後「福島に近い場所で」ということで、埼玉に場所を移して新たに店舗を開きました。

「今もお米は福島は会津産のものを使っているのですが、埼玉の店のころから福島のお米を使っていて、やっぱりこれは譲れないなと。日本酒も独立した頃からこだわって、福島の地酒を常時20種類ぐらい提供していました。お米がおいしいから日本酒もおいしい。やっぱりこれが一番!」

自分の舌が選んだ故郷の味。震災前から福島の誇りを胸に、千潮さんはお客さんと向き合っていたのです。

今、決断しないと

ご両親から千潮さんに連絡があったのは昨年の春のこと。『町に仮設商店街ができる』というものでした。埼玉の店を少しずつ軌道に乗せようとしていたこの時期、迷いに迷った千潮さんが出した答えは故郷に戻るという選択。

「もし、震災がなかったら今も埼玉で暮らしていたと思います」

震災の影響を受け、廃業に追い込まれてしまった実家の布団屋さんですが、ご両親は健在。今はくろさかで千潮さんを手伝っています。

「今、こうして海鮮丼のお店をやっているのは、埼玉のお店が丼のお店だったからなんです。職人さんの数がいればにぎり寿司もできるのですが、現実的には難しいですね」

現在は住まいを実家のあった敷地に移し、復興に向けて海鮮丼で多くのお客さんを力づける日々が続きます。

「まだ町は寂しいのでもっと賑やかになってほしいな。そのために、もっと色々な取り組みでまち・なみ・まるしぇも賑やかになってくれればと期待しています。いづれにしても、町で働く人手をどうやって探すか。浪江の復興はここにかかっていると思う」

2019年を目標に漁港の整備が進む浪江町。海の町で水揚げされた新鮮な魚介類を使った海鮮丼に会えるのは、まだ先のことです。

「でも、やっぱり浪江の地魚を使いたいですね。お客さんからもそれを望む声も多いので」

昔、水揚げされた鮭を親戚からもらった時に、家庭ではいくらの醤油漬けを作って、炊きたてのご飯にこんもりと盛って食べていたという浪江の食文化。
光り輝く粒で福島のお米が覆われたいくら丼に会えるのが、今から待ち遠しくてたまりません。

 

海鮮和食処くろさか
住所:〒979-1513 福島県双葉郡双葉郡浪江町幾世橋六反田7−2 まち・なみ・まるしぇ内
電話番号:0240-34-7250
営業時間:11:00-15:00(事前予約で夜の宴席対応もあり)
定休日:日曜日、祭日(不定休あり)

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