グルメ

2017-07-04

米農家が絶賛する白ごはんと、丁寧な仕込みで作られるおかずは正義!

まち・なみ・まるしぇで、家庭的な料理を日替わり定食とお弁当の形で提供する、キッチングランマさん。食べ飽きない美味しさと盛りの良さが評判を呼び、午前中の仕事を終えた役場職員や作業員の方などで、昼時はいつも賑わいが絶えません。

普段の平日営業では肉と魚の主菜が一日置きに登場。
種類豊富な副菜との組み合わせで、お客さんを飽きさせることがありません。

ある日の日替わりは唐揚げ定食。香ばしい衣に包まれた大ぶりの主役がたっぷりと。カリッと香ばしい食感からほとばしる肉々しいエキスは、ごはんとの相性抜群。お味噌汁や副菜のポテトサラダに冷奴、漬物、そしてデザート代わりの果物まで。多彩なおかずが主役を支えます。

また、定食と同じ料理が入ったお弁当は、ごはんの量が『普通盛り』と『半ライス』の2バージョンで提供。普通盛りと言いつつも大満足のボリュームで、ガッツリ食べたい人も大満足な550円。女性なら半ライスで丁度いいのかもしれません。

ところで、料理を食べていて特に感じたのがごはんの美味しさ。茶碗に盛られたホッカホカはもちろんですが、お弁当でもポテンシャルの高さを発揮。冷めてもおいしいごはんって、やっぱり嬉しいですよね。

「正直、お米にはこだわりました。県内の農家の皆様方にご協力いただき、お客様に笑顔で『おいしい!!』言って召し上がっていただいています。」

おばぁちゃんが作る、料理の力

誇らしげに語るのは、このお店を営む渡邊りえ子さん。食堂経験はなかったものの、浪江町からの呼びかけに応えて2016年10月にキッチングランマをオープン。

新鮮な野菜の仕入れや仕込みに余念なく、毎日のようにお店に足を運ぶりえ子さん。次の日の笑顔のために、78歳のおばぁちゃんを筆頭とした平均年齢60歳を超えるスタッフのみなさんが、一品一品に思いを込めています。

そんな料理の中で特に人気のおかずを尋ねると「肉と魚とではお肉のおかずが人気ですが、特に豚の生姜焼き定食ですね。厚さ5ミリのモモロースを3枚使ってボリューム満点なんですよ」とのこと。「自分の家族に食べさせたい料理」というコンセプトで作られる生姜焼きの美味しさは、きっと格別のはず。あー…食べたい!!

渋谷区で生まれ埼玉県で育った幼少期を経て、父親の仕事の関係で福井に移り住み、昭和45年ごろに浪江に生活基盤を移したりえ子さん。

「23歳の時に母から受け継いで下宿屋を始めました。その後、酒屋の嫁、3つの会社の起業にたずさわったり。今はここが本業です!」

職歴の数だけ出会いの縁も多く、りえ子さんの元には色々相談が来ます。その一つが『まち・なみ・まるしぇ』への出店でした。

「まち・なみ・まるしぇに出店しないか?という話をいただいた時期は、私自身が60歳を過ぎていました。新しいチャレンジをする上での体力はもちろん、異分野事業の取り組みだったので迷いました」

出店を迷っていたりえ子さんの背中を押したのは、東日本大震災に伴う避難先での生活でした。

「震災によって町はバラバラになってしまいましたが、逆に言えば、そのことが機会となって私は多くの方と知り合うことができました。その中に、平均80歳のぐらいの小高のおばあちゃん3人組がいたんです。私自身は仮設住宅の中で知り合いがいなかったけど,積極的に色々な方と会いたいと思って外に出るタイプ。一方で、引っ込み思案の方もいました。そんな中でおばぁちゃん3人組が尽力されたんです」

仮設住宅で色々な方の面倒を見てくれたおばあちゃん達が小さな台所で作っていたのが、椎茸のご飯やかぼちゃ饅頭といったおふくろの味。決して華やかな料理ではありませんが、素朴で実直な美味しさを口にしたりえ子さんから生まれたのは「美味しい!」という言葉と笑顔。そして、それを目の当たりにしたおばあちゃん達にも笑顔が生まれる。偉大な先輩が作る料理の力を感じた瞬間でした。

「こういう料理をおばあちゃん達と一緒に作るのなら、自分にもやれるかも。そう一念発起して、知り合いのおばあちゃん達に声を掛けてお店を出すことを決断しました」

町役場に伝えたのは「店で出すのは、自分の家族に食べさせたい料理ですけどいいですか?」という一言。おふくろの味の帰還です。

お客さんは、自分の家族のようなもの

「お店の閉店時間を過ぎてもたまにお客さんがいらっしゃるんです。もしその時に日替わりが売り切れていたら、別のおかずで対応してお召し上がりいただくんです」

ある日のまち・なみ・まるしぇ。ホワイトボードを見れば、青線が引かれたメインディッシュの上に、新たなおかずの名前が記されていました。

「お腹を空かせた人の胃袋を満たす。それこそがここの一番大きな役割だと思ってます」

お客さんに対して「自分の家族だったら」という考えで常に接し、心からのおもてなしを欠かさないりえ子さん。もし、自分がお腹を空かせたまま夜遅くに家に帰って、お母さんが台所であるものを使って腕を振るってくれたら、嬉しくなるのは当然ですよね。

「試練と試行錯誤の繰り返しの日々ですが、毎日が充実している。そんな生活が私は好きです」

震災と避難生活を乗り越えて、今日も町の台所として機能するキッチングランマ。あの日食べたおばぁちゃんの料理の美味しさと気持ちは、ここに受け継がれています。

「2月からお弁当の配達もしていて、これから車で配達なんです」

でも、たまには休んでくださいね。もっとずっと、この店の美味しいご飯とおかずが食べたいから。

 

キッチングランマ
住所:〒979-1513 福島県双葉郡双葉郡浪江町幾世橋六反田7−2 まち・なみ・まるしぇ内
電話番号:0240-34-1007
営業時間:11:00-14:00
定休日:水、土、日曜日(毎月の『まるしぇの日』は営業)