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2018-02-14

300年前から続く伝統の祭り

茨城県から岩手県の広い地域に今も残る安波信仰を知っていますか?
常陸風土記によると、茨城県霞ヶ浦の南、旧阿波村の大杉神社周辺は「あんば」と呼ばれていました。航海の目印となる一本の巨大な杉があったことから、大杉大明神は航海の神として信仰され、その信仰は安波信仰として東北の港町に今も残っています。
そんな安波信仰に由来するのが浪江町の安波祭です。
浪江町には第12代天皇である景行天皇の御世に勧請されたという苕野(くさの)神社があります。約300年前、当時は請戸沖の苕野小島にあった苕野神社で、潮水を献じて水の濁り方や泡立ち方などからその年の漁獲を占ったことが安波祭の始まりと言われています。

冬の海で神輿を清め、潮水で1年を占う

朝、紅白2つの樽御輿が町を練り歩くところから安波祭は始まります。この御輿は神聖なものとされ、船乗り以外は触ることも許されないそうです。
一方、獅子舞や田植え踊りで賑わう苕野神社では、神事を終えた神社の神様が本御輿に乗り移り、先を行く樽御輿に加わります。二台の御輿は町を練り歩きながら、民家を一軒一軒回っていくのです。
正午過ぎ、御輿は浪江の浜へと到着。まずは赤い樽御輿が、その後を追って白い樽御輿が、それぞれなだれ込むように海中に突進し、潮水で御輿を清めます。一方の本御輿は、しめ縄が張られた浜の御小屋に安置されます。
そして最後に、神主が樽御輿の到着前に柄杓と手桶を使って汲んだ潮水を、砂で作った台形の穴の中へと注ぎ込み、泡の濁り具合を見て一年の吉凶を占って安波祭は締めくくられます。
古くから悪天候を理由に祭りを中止すれば災いが起きると言われてきたこの安波祭は、なんと300年もの間欠かさず決行されていました。

失われた伝統、そして祭りの復活

そんな伝統ある安波祭も、東日本大震災では甚大な被害を被りました。
海のそばに鎮座する苕野神社では、宮司の家で代々受け継がれてきた、吉凶を占う泡模様の書物が社殿もろとも津波により流出し、今では吉凶の占い方を後世へと伝えることもできなくなってしまったのです。
しかし、そんな状況の中でも安波祭は住民たちの力によって震災の翌年から仮設住宅など町外で開催され続け、今年ついに浪江の町にも帰ってきます!
2月18日、苕野神社本殿跡地の境内で行われる安波祭では、最初に神事が行われ、雅楽や獅子舞、田植え踊りも行われる予定です。
安波祭を知っている方も知らない方も、300年続く由緒ある祭りの新たな1ページにぜひお立ち会いください!

<開催概要>
日  時:2018年2月18日(日)午前10:00〜
場  所:苕野神社境内(浪江町請戸)
詳  細:神事、雅楽奉納、神楽奉納、田植踊奉納